
2019年11月18(月)〜20日(水)まで、私が代表を務める参加型演劇集団?(勝手にそう言っている……)アカンサス第2弾公演『OTOGI』が上演されました。
平日にも関わらず全5公演は満席が続き、初日が終演したあとには一般チケットは全公演完売……ありがたいことに、リピーターさんが現れたのです!! 平日に上演することは勇気のいる決断でしたが、お客様のおかげで無事に終演することができました。
今回は、そんな『OTOGI』にまつわるお話しを書いていこうと思います。
目次
公演の詳細
こんなフライヤーを発信していました。「前売り券」と「当日券」の値段が同じなのは、後日訂正しました……
ちなみに、旗揚げ公演『Believe in...』のフライヤーは⬇️⬇️⬇️
なぜ色が違うのか……(笑)
どちらも共通していることは、上演場所である【Theater】がライブハウスであるということ。「演劇をやるのにライブハウス?」と思う方もいるかもしれません。これは、次の「アカンサスの誕生」でゆっくり書くとして、「アカンサスはライブハウスで演劇をやる集団なんだ……」くらいにとどめておいてください。
アカンサスの誕生
アカンサスの誕生は、ある飲み屋で短大同期のYui Arakawaとの会話からはじまった……
ほぼ、この会話だけでアカンサスの旗揚げが決まりました(笑)
私とYuiは、短大時代に専攻している科が違ったにも関わらず、授業が終わると毎日のように某ファミリーレストランに行き、日が暮れるまで……いや日が暮れても話し続けていました。
卒業してからは、さすがに会う頻度は減っていましたが半年に1回は必ず会っていたでしょう。
そんな、半年に1回開催されていたYuiとの飲み会に、ある日Yahmanが登場します。3人が良い感じに酔っ払ってきた頃、「自分たちでなにか作品つくろうよ!!」の流れになって上の会話が生まれました。
そこから、何度3人で飲んだことか……「あーでもない」「こうでもない」「これならいける!」「これは無理だ」など、アイデアが出てくるたびに白紙に戻り……の繰り返し。
旗揚げ公演の『Believe in』では、本番1週間前にも台本が変わる事態がありました。
そんなこんなで、3人で集まったときは熱い会話になり、時間を忘れることなんてしょっちゅうでした。ここからはじまったアカンサス……3人で決めたことは「とにかく面白いことだけやろう!!」
私が脚本を書き、YuiとYahmanが音楽を生み出し、Yuiは出演もする……今後はどうなるかわかりませんが、とりあえずスタートはこんな感じだったかな。
『OTOGI』の誕生
私は小さい頃から、ひねくれた子どもでした。絵本を読んでもらっても「なんで浦島太郎はおじいさんになっちゃうの?」「なんで桃を切ったのに桃太郎はきれないの?」「なんでかぐや姫は月に帰るの?」と、幼稚園の先生に質問してしまうような子です。(当時の先生、ごめんなさい)
特に浦島太郎に関しては「なぜ良いことをしたのに報われないのか?」大人になってからも疑問でした。
おとぎ話には、様々な教訓が詰め込まれていて、それを知った子供は「これは、あのおとぎ話で読んだな」などと思うのですが、浦島太郎からはなにを学べば良いのでしょう? 「良いことしても、調子に乗るな」なのか「おいしい話の裏には何かあるぞ」なのか? ちょっと子どもに教える教訓としては早すぎますよね?
そこで私は、小さい頃に読んでもらったおとぎ話(日本昔ばなし)を読み直してみることにしたのです。
そこには衝撃を受ける内容が……「桃太郎は桃を切る前に出てくる」「浦島太郎はおじいさんになったあと、鶴になる」「金太郎に関しては内容を覚えていなかった……」など、小さな頃に何度も読んでもらっていたのに、知らないことばかりの絵本に変わっていたのです。
その事実を知った私は、本の街として有名な神保町に足を運んだり、絵本の専門店に足を運んだり、とにかく「おとぎ話」に夢中になりました。
ときには子どもと並んで絵本を読みました……書店員さんが怪しんだのか声をかけられたことも……(笑)
そんなこんなで、すっかりおとぎ話の虜になっていた頃にあることを感じました……
「おとぎ話は、子どものためだけの絵本じゃない!!」
このことを、多くの人に感じてほしい!! ただそれだけでした。
今では子どもに「きびだんごをあげるから」「そろそろ月に帰らないと」なんてつまらない冗談を言っても……
「きびだんごってなに?」「月に帰るってなに?」「桃太郎ってなに?」「かぐや姫って誰?」と言われてしまう時代です。
私は、おとぎ話の本当のおもしろさを大人が知れば、「子どもたちに話してあげたい」という気持ちが生まれることを信じて『OTOGI』を書きはじめました。
実は、この構想を軽く考えていたのは3、4年も前のこと……大きな舞台でもできるように壮大なスケールの台本を書き上げたあとに「アカンサス用」にコンパクトにまとめあげたのです。ということは……私が知っている「おとぎ話」のすべてを、まだ話していないのです。
スタッフ陣
スタッフ陣といっても、アカンサスを立ち上げた3人のことです。
主な役割は……
脚本・構成・制作・・・CO-2N(塩坪和馬)
音楽・編曲・・・・・・Yahman
音楽・出演・・・・・・Yui Arakawa
私のことはおいておき、今回は2人がつくる音楽について書きましょう。今回はトークショーで一瞬だけフォーカスされたYahmanですが、彼の尊敬するところは「日本語へのこだわり」です。
台本の歌詞は主に私が書くのですが、初めて台本を2人に読んでらったあとにスタッフ会議をするとYahmanは「この言葉を強調するためには、こうしたほうがいい」「これは伝わらん!!」「言葉の並びを変えよう!!」など、「どうすれば、歌詞が人に伝わるのか?」に、強くこだわってくれます。
作品を観るお客様は、本番中に「歌詞を聴き直す」ということができません。いかにわかりやすく、伝わりやすい言葉をチョイスできるのか? また、どう並べれば良いのか? 彼なしにはアカンサスの音楽は成立しません。
そしてYui……出演もしながら彼も曲を作ってくれています。彼は今回の『OTOGI』に関していえば、私の作った歌詞を忠実に音楽をのせてくれました。つまり、Yahmanとは真逆のスタイルです。
この2人の違いが本当におもしろいところです。私は2人のことを心から尊敬していて、台本を渡すときは「ボツを食らうかも……」という緊張もありつつ、同時に「どんな曲になるのかな?」というワクワク感もあります。
曲によっては「ここはYahmanでここから先はYuiだな」と最近わかるようになってきました。
アカンサスになくてはならない「音楽」を生み出す2人は「脚本」と同じくらい重要な役割をもっています。
あとは、私がやっている「制作」を誰かに任せたい……(笑)
出演者について
さてさて『OTOGI』の出演者についても書いていきましょう。11月20日(水)のトークショー
で「塩坪さんが思う出演者の長所を教えてください」というコーナーでも少し話したのですが、改めてアカンサスに出演してくれたことへの感謝を込めて……
「かぐや・緑鬼」・・・町屋美咲
とにかく歌が上手い!! ご覧になった方なら全員がうなずくことでしょう……
ただ、私が今回感じた彼女の魅力は「表現としての歌が上手い」ということです。歌が上手い人って、世の中にたくさんいらっしゃいますよね? それが役者やシンガーではなくても「近所の歌うまさん」や「同級生の歌うま」など……
美咲の歌を稽古しているとき、常にアップデートされる表現に出演者たちからも拍手が起こるほどでした。
私が「こうしてみようか」というと「わかりました!やってみます!」の返事ですぐに応えてくれる力にも拍手です。
『OTOGI』の物語のトップバッターとして見事な仕事をしてくれました。ありがとう!!
「乙姫・鶴・黒鬼」・・・華花
彼女もYuiと私と同じ短大出身です。さらには、その後の養成所まで同じところで学び、相手役を何度もやってくれていました。同じ作品をつくりあげるのは10年ぶりくらい!?
彼女はスポーツ選手などでよく聞く「ゾーン」の演技バージョンをもっていると思います。
1度スイッチが入ったときの集中力は止められないでしょう。今回は3役を任せて、どれも演じ分けをするという大変な役でしたが、私は「華花なら絶対にできる!!」と信じてお願いしました。
信頼関係があってこそのキャスティングであり、それに見事に応えてくれた華花には感謝です。
女性陣2人は、このあと『デスノート THE MUSICAL』への出演が決まっています。
⬇️詳細はこちら⬇️
「浦島太郎・青鬼」・・・Yui Arakawa
改めてここで書くのも恥ずかしいのですが、彼のことも……トークショーでも話しましたが、今回は「心に傷をおった浦島太郎」だったこともあり、台本を渡すときから「冬彦さんでお願い」と頼みました。(冬彦さんを知らない方はググってください……)
最終的には彼の浦島になりましたが、とにかく良い意味で台本を裏切ってくれる役者です。
台本に書いてあることを「俺はこうしたいんだ!!」と演技で見せてくれる役者は、あまりいません。それは「台本に忠実にやろう」と思ってしまう日本人ならではの謙虚すぎる心からきているのかも知れませんが、Yuiは自分の意思をを演技でカタチにしてくれるのです。
これは書いた私からしてみると、嬉しくてたまりません……私の台本を超える役を演じてくれるからです。
この『OTOGI』をつくるきっかけとなった浦島太郎をYuiが演じてくれたことに感謝です。
「金太郎・赤鬼」・・・yoshi.
前作『Believe in...』に続き、出演してくれたyoshi.は、会場の空気を読んで演技ができる万能型役者でしょう。
前回は7ページ以上もある台本を自分でさらに補足のセリフを足して演じてくれたことへの信頼もあり、今回は「お客さんにクイズを出す」という参加型ならではのシーンを見事につくってくれました。
しかも「毎回違うクイズにしよう」といったら、台本にないことまで調べてくれて直前まで「このクイズでいいですかね?」「塩坪さんの反応悪いからこれはやめよう(笑)」などと出番の数分前まで試行錯誤してくれました。
追い詰められたときこそ、役者の本領が発揮されます。誰だって決められたことをやる方が楽に決まっています。それを自分の意思でチャレンジする方向に気持ちをもっていけることは尊敬します。
「自分の物語の結末がわからない金太郎」は、彼とお客様によって出来上がったシーンです。チャレンジ精神で毎公演に新鮮味を持たせてくれてありがとう!!
「少年」・・・SHOYA
彼は、今回が演技初挑戦!! 稽古初日は、本人が1番不安だったことでしょう。しかし、台本を読んでもらうと、とにかく「クセがない」のです。変なイントネーションや余計なアクセントが少なく、言葉がまっすぐ相手に飛んでいくのです。演技を初めてやる人が最初につまずくことを、彼はクリアしていたのです!!
私は演技をするのが初めてだというSHOYAが来るときに「どこから教えればいいのだろうか?」と正直いって不安な気持ちもありました。しかし最初の本読みを聞いて、その不安はなくなりました。「共演者を見て、SHOYAが何かを感じてくれるはずだ」と思ったのです。
本番でSHOYAが毎回いろんな挑戦をしている姿を見て泣きそうになっていたことは秘密……
実は、少年という役は最初の台本には存在していませんでした。しかし、何度読んでも私は違和感を感じていて「もう1役増やしたい」の思いから誕生しました。
彼がみんなに本を配るところからはじまり、彼の歌で終わる……どう考えても作者(私)の少年時代ではないであろう、可愛すぎる顔立ちなのに文句を言わずに演じてくれて、ありがとう!!
そして、次回作はなんとSHOYAが主演!!
⬇️詳細はこちら⬇️
とにかく個性豊かな出演者が、自分の役者としての魅力を発揮してくれたことに感謝です。
本当に、ありがとう……
どんな稽古をしているのか?
とにかく稽古回数が少ない!! 主に歌の練習が3、4回。芝居の稽古は2回で、あとは通し稽古を3回。これでも前作よりは多いです。
アカンサスの稽古回数が少ないのには、主に理由が2つあります。
1つ目は「出演者がそれぞれ自分のフィールドの仕事で忙しいため」
アカンサスほどの稽古期間と稽古時間でセリフと歌を頭に入れて身体に染み込ませる作業は、外の稽古では考えられません。しかし、出演者全員が、本当に予定が合わない……顔合わせに全員が集まれないこともあります。
それでも、短い稽古期間で出演者が「やらないとダメだ」「このままだとまずいぞ」と自分で感じてくれるので、そこは出演者に感謝です。私が素晴らしい演技指導をしているわけではなく、出演者の意識の高さが、アカンサスの作品をつくり上げているのです。
2つ目は「参加型を新鮮に保つため」
まず、どんなに長く稽古をしても本番で完璧になることはありません。私は参加型にしているのは「誰が見ても毎回違う作品に感じるように……」と考えているからです。
毎回、完璧にセリフと歌を間違えず、動きも間違えずにできるのであれば、ロボットがやった方が再現度や精度は高くなります。しかし、私たちは人間です。間違えるからこそ新しいものが生まれることがありますし、間違えるからこそ面白くなるシーンもあるのです。
稽古期間が長くなると、出演者に「慣れ」が出てきます。「ここはこれくらいの力でいいな」など、計算して芝居ができるようになるのです。これは悪いことではなく、出演者には必要なスキルなのですが、これが定着する前に本番に立つことで、より「参加型」の新鮮さが増します。
出演者は毎回、良い緊張感をもって本番でお客様の前に立つことになります。
この2つが主に稽古期間が短く、回数も少ない理由です。
本番の裏側
稽古が短ければ、本番でのハプニングはつきものです。私は、そんなハプニングが大好物です(笑)
本人たちのために、「誰がこんなハプニングをした」なんてことは書きませんが、セリフが変わるのは当たり前のようにおこりますし、飛ぶこともあります。中には、勝手に歌の歌詞も変わります。衣装のトラブルや動きのことも、細かいことを含めれば1回もパーフェクトな回はなかったのかもしれません。
しかし、それでOKなのです。
私は、出演者が本番でミスをして「ごめんなさい」と言われても一切、怒ることはありません。むしろ「ナイス!!」と言います。
これには、私がアカンサスのときに「脚本・演出」ではなく「脚本・構成」という肩書にしていることに関係しています。
私が出演者に伝えているのは「役のイメージ」「どこから出てきて、どこに捌けるのか」「舞台上のマイクの位置」だけです。もちろん相談されたら一緒に考えますが、あとは役者に任せて細かい修正を加えるだけです。
私の書いた台本は所詮、脳内で描いたイメージを文字にしているだけです。これを私が思う通りに役者に伝えれば、それは私の脳内イメージが完成形になってしまいます。しかし、これを「出演者がやりたいようにやって」にすることで、私のイメージと違う役が生まれます。
つまり、簡単に台本の力を超えることができるのです!!
「やりたいようにやって」というのが、1番苦労することかもしれませんが、私はキャスティングされた人間が「この人じゃないとこの役は考えられない!!」とお客様に思ってもらいたいのです。それには、私の指示ではなく本人の意思が必要です。
本番の裏側では出演者がそれぞれ違った準備を行い、それぞれの意思で「今日はどうするか」「なにをやるか」「自分になにができるのか」を考えているのです。
まとめ
こうやってアカンサスのことを文章にまとめると、自分の中にいろんな思いがあることに気がつきます。
いかに出演者の力で成り立っているのか……音楽をつくってくれる2人の力がどれだけ貢献してくれているのか……
トークショーでも話しましたが、これまで2作品のCD化が決まっています。どうやって実現するのか? いつ次回作をやるのか? なにも決まっていません。
今は出演者もスタッフも、それぞれのフィールドに帰っています。これからのことは、また追々……
私も、自分のフィールドで新しい作品を生み出すための修行をしてきます。長い長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。