なぜ役者は「読書」をしなければいけないのか?

2019年12月28日更新!!

 

役者を目指すあなたへ……

 

今日は役者の皆様へ送る「役者が読書をする理由」についてです。

 

私は都内を中心に演技講師をしていますが、役者を目指す人の多くの人が「読書をしない」という事実があります。

 

私自身が役者を志していた学生時代から、多くの演出家や演技指導者の方に「役者は読書をしなさい!!」「演技が上手くなりたいのであれば読書をしなさい!!」と何度も言われてきました。

読書が大嫌いだった私が、今では年間212冊の本を読むようになったのは、何を隠そう「演技が上手くなりたかった」という理由がきっかけです。

 

しかし……

 

なぜ読書をすると演技が上手くなるの?

という疑問があって当然です。

この理由を教えてくれる人は、あまりいませんでした。

人間が行動するためには、行動に伴う「効果」がわかっていないと動くことができません。

 

「とにかく円周率の3.14から先を100桁覚えなさい」

 

と言われても、円周率を覚えて自分にメリットがあるのか? 意味があるのか? を考えて、「意味がない」と判断すれば、本気で覚えようとは思わないでしょう……

 

これと同じように、「役者は読書をしなさい」と言われても、「本当に読書をしたら演技が上手くなるのかな?」という疑問があれば、自分から読書をすることはむずかしいでしょう……

 

本当は、その意味さえも自分で考えるべきなのですが……

 

今日は私が読書家になってから、役者としてどんな変化があったのか?

ということを書いていきます。

 

※ 当たり前ですが、読書だけで演技がうまくなるわけではありません。

※ すべてが読書で解決するとは思い込まないようにしてください。

 

 

 

【読書効果の一覧】

 

過去に「読書効果」について書いている記事があります。

これは役者向けではなく「読書初心者」に向けた「効果」ですが、役者が読んでも同じ効果が期待できます。

リンクを貼っておくので「自分に足りないな」「これは意識したことないぞ?」と思うものをチェックしてみてください。

 

本を読むと身につくもの ①「教養」ってなに?

本を読むと身につくもの ②「想像力」

本を読むと身につくもの ③「語彙力」

本を読むと身につくもの ④「読解力」

本を読むと身につくもの ⑤「学力」

本を読むと身につくもの ⑥「聞く力」

 

【活字への苦手意識をなくす】

 

「活字が苦手な奴は役者なんてやめてしまえ!!」

私が学生時代に言われた一言です……

 

多くの現場で台本を渡される役者が「活字好き」と「活字嫌い」のどちらが望ましいか?

と聞かれたら、考えるもでもなく「活字好き」であることが望ましいでしょう。

 

「活字アレルギー」なんて言葉もありますが、これは本人が活字アレルギーだと思い込んでいるだけで、実際にそんな病名は存在しません。

 

私は活字アレルギーだから……

 

と思っている人は、今日から「自分は活字が苦手」「活字アレルギーだ」という言葉を口にするのをやめましょう。

 

人間は、自分が口にしたことが現実の行動でも起きるようになっています。

「活字が苦手」と言い続けることで、「活字が苦手な自分」をつくり上げてしまうのです。

 

本当に活字アレルギーなのであれば、あなたは他人のSNSの文字を見ただけでも「うわ〜嫌だな……」と思うはずです。

 

本来は活字が苦手ではないのに、苦手意識を持ってしまうのは、誰のせいでもなくあなた自身のせいです。

 

読書をすることで、「活字が嫌いな自分」を「活字が好きな自分」に変化させることができるのです。

 

【読解力がないと雰囲気芝居しかできない】

 

役者が台本を読むときに「この本は見ている人になにを伝えたいのか?」が読めなければ、始まりません。

 

台本を通してだけではなく「このシーンはなにを伝えるシーンなのか?」「このセリフはなぜ必要なのか?」も知る必要があります。

 

つまり、本を読んで「目的」を探す作業です。

 

これを探すために必要なことは「台本の読解」です。

 

演じている役者が「このシーンはなにを伝えるのか?」がわかっていないのに、お客さんに伝わるわけがありません。

 

日常会話で……

 

この人は結局、なにが言いたいの?
と思うことはありませんか? 日常会話なら百歩譲っていいでしょう……しかしお客さんからは「お金」と「時間」をもらっています。
逆の立場だと役者は「つまらなかった!!」「時間を返せ!!」というのに、自分が演じる側のときは、平気で「目的」を理解しないまま演じてしまうのです。
読解力は、本を1冊2冊読むだけでは身につきません。

 

読んだあとに「この作品はどんな作品だったのか?」を考えなければいけません。

 

「読解力」を身につけるためには「速読」ではなく「精読(丁寧に味わって読むこと)」が求められます。

 

台本から「目的」を探せないと、書いてあることから「雰囲気」だけしか読み取ることができません。

 

役者が探し出した「目的」が演出家の求める「目的」と違っていても、「目的のある演技」と「目的のない演技」は、見ていて雲泥の差があります。

 

私は、自分の生徒に「間違ってもいいから、目的を必ず見つけなさい」と教えています。

 

役者が演出家に言われるダメ出しでも、「目的がある演技」をしている人と「目的のない演技」をしている人では言われることが違います。

 

演出家
今、どういう気持ちで演技してた?

 

このように言われたら「目的がない演技」に見えている可能性があります。

「今、なにをしていたの?」「なにがしたいの?」など、言葉のチョイスは演出家によって様々ですが、目的が見えない演技に対しては演出家は役者に問うことが多いです。

 

演出家
今こういう風に見えているから、もっと◯◯してみようか?

 

このように言われたら「目的がある演技」に見えている可能性があります。

演出家が「こう見えている」「こうだったね」と結果を伝えているときは、方向性が間違っていても「目的」が見えている証拠です。

 

上記2パターンは、役者が稽古場で聞いたことのあるダメ出しだと思います。

 

雰囲気で「こんな感じ」と芝居をしている役者は、演技をしていても自信がなくてよそよそしい演技をします。

 

「目的」が明確な役者は、間違っていても「目標」を達成するための動機があるので堂々とした演技をします。

 

稽古場で人の演技をしっかり見ていると、すぐにわかるでしょう。

 

 

【演出家の要求に素早く対応できる】

 

同じ台本でも、演出家によって役者に求めるものが違います。

 

先ほどの「目的」だけでも、あなたが台本から読み取った「目的」とは違う「目的」を役者に要求することは、珍しいことではありません。

 

稽古場で演出家が「こうしてみよう」「ああしてみよう」という要求に素早く対応できるのは、やはり日頃から本を読んでいる役者です。

 

本を読むことによって「シュチュエーション」「考え方」「目的」「感情」など、様々な表現方法を用意することができます。

 

演出家の要求に対して、読書をしない役者は……

役者A
急にそんなことを言われても……

 

このように、現場で手詰りになってしまい「対応力のない役者」として扱われてしまいます。

 

対する読書をする役者は……

なるほど……それなら、こうしてみよう!!
このように、稽古場でも瞬時に対応できるのです。
どちらの役者が演出家に必要とされるのか? 一目瞭然ですよね。
この力も、本を数冊読むだけは身につきません。
役者は暇さえあれば本を「精読」して「多読」を心がける職業なのです。

 

 

【台本に書かれていない「感情」を読む】

 

小説に書かれているのに、台本に書かれていないものは「感情」です。

セリフに「私はとっても嬉しいからお礼を言うね。どうもありがとう!!」「私は怒っているので、今からあなたを殴ります!!」なんて書いてあれば、説明的な演技になることでしょう。

 

台本に書かれているものは、大きく分けて「セリフ」「ト書き」の2つです。

この2つから「目的」も探さなければいけませんし「感情」も探さなければいけません。

厳密にいえば、もっと探すものはあるのですが……

 

紙に書いてある文章から「感情」を見つけ出すことは容易なことではありません。

その「感情」を探す練習ができるのが「小説」です。

 

小説には「  」(かぎかっこ)以外の文章に「感情」が書いてあります。

 

もちろん文章を扱うプロが書いているので「嬉しい」「怒っている」などの単純な言葉ではなく「冷静を装いながらもシャツの背中にはびっしょりと汗をかいていた」

「あまりの恥ずかしさに私の顔は沸騰したヤカンのような熱さをうみ出した」など、状況まで細かく書いてくれているのです。

 

「小説」という役者にとって最高のトレーニング手段があるにも関わらず……

 

台本が読めない……

 

と嘆く役者は非常に多いのです。

厳しいことを言えば「小説を読んでいないのに台本を読み解こう」なんて考えは甘すぎです!!

 

勉強したことのない範囲をテストで出題されているのと同じくらいハードモードだと言えるでしょう。

 

【読書をしていない役者ほど文句が多い】

 

役者同士で演出家の愚痴を言っている光景は、よく見かけるでしょう。

稽古場で演出家と言い合いをしていることもあります。

もちろん「演出家に意見してはいけない」「自分の考えを言ってはいけない」ということではないので、この判断基準はむずかしいのですが……

 

それでも、読書をしていない役者ほど……

 

あの演出家の言っていることは間違っている!!

このセリフだとやりにくい!!

 

という声をよく聞きます。

こんなものは、役者のわがままです。

 

上記のようなことを言っている役者は「自分がやりやすいように演技をすること」しか考えていません。

 

演技は「お客さんに伝えること」が最優先です。

役者がみんな「自分のやりやすい演技」を勝手にやれば、お客さんに伝わるものも伝わらなくなります。

 

読書をしていないと「自分の考えがすべてだ!!」「これ以外考えられない!!」という狭い視野でしか演技ができなくなります。

 

要するに「自己中心的な考え」です

 

コンビニ店員に「弁当温めるの面倒だから、家に帰って自分で温めてください」なんて言われたら、あなたはどう思うでしょうか?

コンビニ店員さんだって弁当を温める手間なく袋に入れるだけの方が、無駄な作業は減りますし、楽ができます。それでも毎回お客さんに「お弁当温めますか?」と聞くのは、お客さんを優先しているからです。

 

少し口が達者な役者になると……

 

こうした方がお客さんに伝わると思います。

このセリフを変えた方がお客さんに優しいですよね?
まるで「私はお客さんのことを考えているよ?」の空気を出す役者もいます。
これも時と場合によりますが、「お客さんにどうしたら伝わるのか?」を判断するのが演出家の仕事です。
役者として作品に関わるのであれば、特例を除いては「役者の仕事」をこなすべきです。

読書をして、様々な角度から広い視野で作品を見れる人は、演出家の考えを察知して演技をすることができます。

 

役者は「演技をすること」が仕事で「文句を言うこと」が仕事ではありません。

「文句ばかりの役者」は……

 

私は演出家の要求に応えられない、自己中な役者です。
と言っているようなものです。
読書家でも文句ばかり言う人もいますが、そんな人はカタチばかりの偽読書家です。
1つの作品から1パターンしか学べない読書ではなく、1つの作品から「こうとらえることもできるぞ!」と2パターン3パターン……といくつもの発見ができる読書をしている人は、演出家の言うことにも違うパターンで答えられる力があるのです。

【まとめ】

「活字が苦手」は思い込み。

「目的」をもって演技をしよう!!

「小説」を読んで「感情」を読み取る練習をしよう!!

要求に応えるために読書で引き出しを増やそう!!

しおつん

 

はじめにも書きましたが「読書」だけでは演技は上手くなりません。

もし読書だけで演技が上手くなるのであれば、毎日電車で本を読んでいるサラリーマンは演技のプロになってしまいます。

 

しかし、「読書」をすることで演技の上達を助けてくれることは間違いありません。

 

演技の成長は数値で表せるものではありません。

「今日は頑張ったから演技レベルが5上がったな……」なんてことはないです。

だからこそ、継続して努力をする必要があるのです。

 

「読書、読書ってうるさいな……」と思われても、私は「演技をするなら読書は絶対必要だ!!」と言い切ります!!

 

私自身が10 ページも本を読めなかった頃に比べて、年間212冊の本を読めるようになった今では、「台本を読む力が確実にレベルアップしている」と実感しているからです。

 

役者で読書をしている人が少ないのであれば、あなたが読書をすることで「他の役者と違う景色を見るチャンスがある」と言えるでしょう。

 

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